仏の顔も三度までですわ!愛人と夫のツケ、すべて返していただきます

逆鱗

キサラが矢面に立つようになり、私の生活に再び平和が訪れた。
シェリーナもさすがに自分の立場の危うさに気づいたのか、私に当たってくることがなくなった。
ランドリック関係で顔を合わせるときの視線はおどろおどろしいほど怖いけど、実害がなくなりホッとしている。
デルバートとの仲は完全に冷え切っているが、それでも仮面夫婦を演じる理性をお互い持ち合わせていたのは不幸中の幸いだ。
表向きは何の問題もないまま時は過ぎ、ランドリックは3歳になった。

「お母さま、最近ランドリックが大人しい気がするんだけど」

9歳になったミラーネが、心配そうに私に伝えてきた。

「ミラーネもそう思う?」

実は私も気になっていたんだよね。

「ランドリックが大好きなすごろくに誘ったんだけど、断られちゃった」

8歳になったリフィールも心配そうだ。
ランドリックとは週3回家族の時間を過ごしている。
明るく元気な男の子に育っていると思っていたんだけど、ここ最近は言葉数も動きも少ない。
何より笑顔に覇気がない…というか作り笑いみたいな笑顔ばかりだ。
今日も私たちから少し離れたところで、植物や虫を1人で眺めている。

「ランドリック、こっちおいで」

私はランドリックに声をかけて両手を広げた。
ランドリックは振り向いたけど、また地面に視線を戻してしまった。
私は立ち上がり、ランドリックの隣にしゃがむ。

「なに見てるのかな?」

話しかけても無言のランドリック。
私は少し強引な手段をとることにした。
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