もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長課長の一途な愛に包まれて〜

甘い嫉妬

出勤すると真紘さんはすでに出社しておりデスクに座っていた。

「おはようございます」

ついさっき朝の挨拶をしたばかりなのに何事もなかったかのように交わす言葉はこそばゆい。

「あぁ、おはよう」

そっけない返事のはずなのに、目が合うだけで胸が高鳴り始める。周囲から声をかけられハッとし、彼からようやく目を離すと私はデスクに座った。

「花菱さん、朝から悪いんだけど一緒に確認して欲しいんだ」

松木さんが待っていたとばかりに朝イチから私のデスクに来ていた。そして私のパソコンの共有フォルダーを開けると一緒に覗き込むようように資料を確認する。松木さんは私の椅子の後ろから身を乗り出すように画面を指差し、「ここの部分なんだけど」と海外からの輸入で輸送経路に関し不明な点があるようだった。

「あ、これはすでに確認が済んでいるので大丈夫です。分かりにくいですよね。今回輸送に関しては船便で確保してあり、税関の手配も済んでます」

「そうだったっけ。すまない、すっかりそこのとこ抜け落ちてたよ。さすが花菱さんだな。助かるよ」

「いえ。お役に立ててよかったです。そういえば前回の会議の時にお菓子の話も出てましたよね。あれはどうなりそうですか?」

カラフルなお菓子を日本で販売しないかと本来の話とは別件で持ちかけられていた。食品となると色々配慮しなければならないことも多いの必要であれば調べ始めた方がいいのではないかと思う。

「実物も見たいし、まだ先の話だと思う。部長にもまだ案件として通してないから」

少しかがみ、小さめの声で話していた。あまりまだ公表していないのだと慌てて小声にし、「すみません、先ばしりました」と伝えると笑って首を振っていた。
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