もう恋なんてしないはずだったのに〜御曹司課長課長の一途な愛に包まれて〜

未来に向かって

結婚式当日。
私は朝早い電車に乗り軽井沢にやってきた。会場でヘアメイクをしてもらうと彼と一緒に選んだピンクのドレスに着替える。黒一色の私がピンクなんて、と思ったが彼に勧められるままに試着すると思ったほどおかしくはなかった。本当は今日このドレスを着ようか悩んだが、服に罪はない。それに現実問題として着る服もないので彼と選んだこれを持ってきた。
会場に入ると恵麻の両親は私を見つけるとすぐに声をかけてきてくれた。

「日菜ちゃん、今日は遠いところきてくれてありがとう」

「本日はおめでとうございます。呼んでもらえて本当に嬉しいです」

「もちろん呼ぶに決まっているじゃない。恵麻も日菜ちゃんに必ず来て欲しいって言ってたもの。それにしても日菜ちゃん、綺麗になったわね。そのドレスもすごく似合ってるわ」

恵麻のお母さんは私の姿を見て驚いていた。高校や大学の頃は恵麻と目一杯おしゃれしていた時期もあったがここ数年はスーツと同じで黒と白の服ばかりだった。だからピンクを着てきた私を上から下まで眺めていた。

「やっぱり日菜ちゃんは色白だしこういう綺麗な色が似合うわ。本当に似合ってる。あなたの良さを引き出してるわ」

そう言うと式場スタッフに呼ばれ、私のそばから離れていった。
私の良さを引き出しているのか。確かに真紘さんが選んでくれるものは私があまり手に取らないものばかり。それなのに身につけると何故かしっくり来る。あの時彼が選んでくれていた情景を思い出すとなんだが胸が苦しい。目立たないネイビーか黒のドレスを中心に見ていたが、そんな私に彼は「もったいないよ。日菜はピンクやベージュが似合うと思うよ」と私が選ばないものばかりを勧めてきた。
彼とは結局木曜から連絡をとっていないままだ。私から連絡できずにいたが、彼からも連絡が途絶えたままだ。
もう本当に終わりなのかもしれない。
でも今回の別れは自分の中できちんと整理はできている。私が彼のためにしてあげられると唯一のことだと理解できている。悲しいし寂しいし苦しいけど、それでも皓介の時とは違う。
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