マリオネット

彼の秘密とこれからーー。

<プルルルル……プルルルル…>

 何回かの着信後に中年の男性が
<お久しぶりです>
 と答えた。

「久しぶり。頼みたいことがあるんだけど」
 電話口の男性は一瞬、言葉を詰まらせたかのようだった。

<凪様の頼みとは……。どのようなことでしょうか?>

 ふぅと一呼吸置いた後に
「……。というわけだから、調べてほしい」

<承知いたしました。しかし――。本当に右京家に帰って来られるおつもりはないのですか?>

 その質問に彼は
「ないよ。それに大切にしたい人がいる。そのためにこれからは生きるって決めたから。俺の最後の我儘だと思って、もう少し付き合ってほしい」
 そう即答をした。

<はい。わかりました。では、結果がわかりましたらご報告させていただきます>

「うん。よろしく」

 電話を切り、必然的にため息が零れた。

「あんまり頼りたくないけど。まぁ、しょうがないか」
 そう言って彼は、重くなった瞼を再び閉じる。

「早く治して、陽菜乃さんを安心させないと」
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