マリオネット
感じない身体
凪に紅茶を淹れてもらい、二人で休憩をした。
「失礼かもしれないけど。陽菜乃さんってしっかりしてるんだね。最初はどういう人かわからなくて。公園で初めて会った時も、夜の仕事しているのかなって感じの人だったから。なんか遊んでそうな雰囲気だったし……。一日だけだけど、一緒に過ごして本当は真面目でしっかりしている人なんじゃないかって思った。洋服買った時とか、ラーメン屋さんの時とか、俺に陰で財布渡して払って来てって言ってくれたでしょ?あれって、男を立たせるためなのかなって思ったりもして」
凪、そんなこと考えてたんだ。
「どうして陽菜乃さんが一昨日みたいな変装とか化粧?までして、男と遊ぶようになったのかを知りたい」
知りたい……か。まぁ、隠すことじゃないからいいか。
「長ーくなるけど、それでも聞く?」
「うん」
「私ね、十年間付き合ってた人に途中から二股かけられてて。結局はフラれちゃった。もう私、三十歳なの。周りはみんな結婚して、子どもも生まれている人が多くてさ。正直焦ってた。他に好きな人がいるなら、もっと早く言ってくれたら良かったのにって思ったよ。私もその人と別れてから付き合った人がいるんだけど、すぐ別れて。そんな時に元彼が結婚したってことを知ったの。私と別れてからまだ数カ月しか経ってなかった。余計、悔しくてさ?でも友達が、男なんかたくさんいるんだからって言って励ましてくれて。男運が悪いのか、遊ぶ人、遊ぶ人みんな大切にしてくれるような人たちじゃなかった。もう自分が傷つくのが嫌で。でも一人でいるのは寂しくて。だったら上辺だけの恋愛ができればいいっていう歪んだ考え方になった。自分が良い子でいれば、着飾れば、みんな優しくしてくれた。身体だけでも私を求めてくれた。自分が尽くせば喜んでくれるし。そんな感じで遊びまくってたって言うか、いい子のフリして誰かの言いなりになって操られて。凪と初めて会った日も、男の人と遊んで、身体を求められてそれに応じた……」
そして私は……。
「私ね。実は、セックスで気持ち良いって感じたことがないの。痛みだけしか感じない。男の人に触られて、気持ち良い、イクって感覚がわからない。痛みの印象しかない。それでも、喜んでもらうために、気持ち良いよって嘘ついて。男から見れば、都合の良い女だよね?凪と会ったその日の男は、夜遅かったけど駅とかまで送ってくれなくて、ラブホの前でその人と別れた。前からそんな気持ちはあったんだけど、楽しいこともないし、嬉しいこともない。何しているんだろう、死んじゃった方が楽なのかなって思って歩いてたら、あの酔っ払い三人に絡まれて。襲われそうになってたところを凪に助けてもらったってわけ。なんか、上手くまとめられない。長くなってごめんね」
凪は黙ったまま、最後まで話を聞いてくれた。
「失礼かもしれないけど。陽菜乃さんってしっかりしてるんだね。最初はどういう人かわからなくて。公園で初めて会った時も、夜の仕事しているのかなって感じの人だったから。なんか遊んでそうな雰囲気だったし……。一日だけだけど、一緒に過ごして本当は真面目でしっかりしている人なんじゃないかって思った。洋服買った時とか、ラーメン屋さんの時とか、俺に陰で財布渡して払って来てって言ってくれたでしょ?あれって、男を立たせるためなのかなって思ったりもして」
凪、そんなこと考えてたんだ。
「どうして陽菜乃さんが一昨日みたいな変装とか化粧?までして、男と遊ぶようになったのかを知りたい」
知りたい……か。まぁ、隠すことじゃないからいいか。
「長ーくなるけど、それでも聞く?」
「うん」
「私ね、十年間付き合ってた人に途中から二股かけられてて。結局はフラれちゃった。もう私、三十歳なの。周りはみんな結婚して、子どもも生まれている人が多くてさ。正直焦ってた。他に好きな人がいるなら、もっと早く言ってくれたら良かったのにって思ったよ。私もその人と別れてから付き合った人がいるんだけど、すぐ別れて。そんな時に元彼が結婚したってことを知ったの。私と別れてからまだ数カ月しか経ってなかった。余計、悔しくてさ?でも友達が、男なんかたくさんいるんだからって言って励ましてくれて。男運が悪いのか、遊ぶ人、遊ぶ人みんな大切にしてくれるような人たちじゃなかった。もう自分が傷つくのが嫌で。でも一人でいるのは寂しくて。だったら上辺だけの恋愛ができればいいっていう歪んだ考え方になった。自分が良い子でいれば、着飾れば、みんな優しくしてくれた。身体だけでも私を求めてくれた。自分が尽くせば喜んでくれるし。そんな感じで遊びまくってたって言うか、いい子のフリして誰かの言いなりになって操られて。凪と初めて会った日も、男の人と遊んで、身体を求められてそれに応じた……」
そして私は……。
「私ね。実は、セックスで気持ち良いって感じたことがないの。痛みだけしか感じない。男の人に触られて、気持ち良い、イクって感覚がわからない。痛みの印象しかない。それでも、喜んでもらうために、気持ち良いよって嘘ついて。男から見れば、都合の良い女だよね?凪と会ったその日の男は、夜遅かったけど駅とかまで送ってくれなくて、ラブホの前でその人と別れた。前からそんな気持ちはあったんだけど、楽しいこともないし、嬉しいこともない。何しているんだろう、死んじゃった方が楽なのかなって思って歩いてたら、あの酔っ払い三人に絡まれて。襲われそうになってたところを凪に助けてもらったってわけ。なんか、上手くまとめられない。長くなってごめんね」
凪は黙ったまま、最後まで話を聞いてくれた。