マリオネット

後悔

「私、あんなに気持ち良かったの初めて」

「いつでも言って。俺が気持ち良くしてあげる」

「なにそれ?」
 深く考えることはやめた。
 考えすぎると泥にハマる。

「ありがとう」
 そう言って、凪の頬にキスをした。
「おやすみ」
 声をかけて、目を閉じた。
 さっきはあんなに眠くなかったのに、眠い。
 凪のおかげでスッキリしたからかな。
 気づいた時には、意識がなかった。

「おやすみ、陽菜乃さん。それにしても可愛かったなぁ。あんな顔するんだ。誰にも渡したくなくなる」

 彼がそう言って、頬にキスをしてくれていたのを私は知らない。





 次の日――。

「陽菜乃さん、朝だよ。起きて!」

 凪に起こされる。
 今日も居てくれたんだ。
 いつかは凪がどこかに行ってしまうんだろうと思っている私は、目覚めた時に彼が居てくれるだけで嬉しいと感じてしまう。

「起きますーー!」

 私生活、プライベートの私は、最低な女かもしれないが、社会人としては遅刻や無断欠勤はしたことがなかった。いつも通りのルーティーンで出勤のため準備をする。

「朝ご飯、豪華だぁ!」

 いつもトースト一枚の朝ご飯だったが、サラダとスープ、珈琲付きだった。

「ごめん、俺もまだ料理慣れてないからこれくらいしか作れないけど。あとお弁当も作ったんだけど、迷惑じゃなかった?」

 えっ。凪、お弁当まで作ってくれたの?
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