マリオネット

歓迎会

 凪と生活をして、二週間くらい経ったある日。
 あれからは特に何もなく平和な毎日だった。
 朝起きて、仕事に行って、帰って寝る。
 その繰り返し。

 凪は文句を言うこともなく、毎日家事をしてくれるし、予算通りに食事も作ってくれる。

 休日は、凪と一緒に買い物に行ったり、DVDを観たり……。
 私は凪以外の男と遊ぶことをやめた。
 彼が居てくれればそれでいい。

 彼との関係性については、自分でもなんて言っていいのかわからないままだ。
 他人の前だと「彼氏」として紹介するし、しかし本当は彼氏ではない。

 拾ってきた同居人?
 凪と一緒に居たいと思っているのは、私だけかもしれない。彼の本心は彼にしかわからない。

 あれから身体の関係もないし、キスしたりすることもない。
 私は彼を本気で好きになってしまうのが怖い。
 ただ安定したこの生活が続けばいいと思っている。彼はどう思っているのだろう?

 彼の容姿なら、私以外でも通用する。
 
 だから
「俺、そろそろ自由で自立した生活を送りたいから出て行くね。もっとお金を持っている女の人と付き合うことになったから……」
 なんて言われる日がいつか来るのだろうか?
 こんなことを、心の隅でずっと思っている。

 ぼんやりとそんなことを考えていたら、職場の後輩、坂本さんに話しかけられた。

「藤崎先輩、ちょっといいですか?教えてほしいところがあって?」
 いけない、ちゃんと仕事に集中しなきゃ。
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