光の向こうへ

選択の檻

病室の白いカーテン越しに、午後の光が差し込む。
 咲はベッドの上で本を開いたまま、ほとんどページをめくっていなかった。

 俺は病院の会議室で同僚たちと向き合っている。
 スクリーンに映し出された資料には、治療の選択肢が二つ示されている。

 ひとつは、今の薬を増量して延命を図る方法。副作用は強く、生活の質は確実に下がる。

 もうひとつは、まだ臨床段階に近い新しい治療。成功すれば症状を大きく改善できる可能性があるが、リスクは高い。命を縮める危険もある。
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