光の向こうへ

決断の重さ

翌日の夕暮れ。
 俺は咲の病室の前で立ち止まり、深く息を吸った。
 何度も頭の中でシミュレーションしてきた言葉。けれど扉の向こうにいるのは、ただの「患者」ではなく、たったひとりの妹だ。
 声をかけるだけで喉が詰まりそうだった。

 ドアを開けると、咲は窓辺に腰かけて外を眺めていた。
 制服姿の学生たちが校庭を走り回る姿を、羨むような、恨むような目で見ている。

 「……また練習見てるの?」
 「別にいいじゃん。私にはもう、見ることしかできないんだし」

 背中越しの言葉に、俺は拳を握った。
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