光の向こうへ

痛みの中の灯

 治療が始まって三日目。
 咲の身体は薬の侵入を拒むように反応していた。
 熱、吐き気、倦怠感。小さな体にはあまりに過酷な試練だった。

 「……っ、やだ……もう入れないで……」
 腕に刺さった管を払いのけようとする咲を、兄は必死に抑えた。
 「咲、待って! 抜いたら危ない!」
 「苦しいの、嫌……もう終わりにして……」

 涙と汗でぐしゃぐしゃになった顔を見ながら、兄の心臓は張り裂けそうだった。
 彼女にこれ以上の痛みを与えるくらいなら、治療をやめた方がいいのかもしれない――そんな迷いが喉まで込み上げる。

 だが、そのたびに自分に言い聞かせる。
 これは生きるための痛みだと。
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