光の向こうへ

退院の光

治療開始から二週間。
 咲の体調は、少しずつ安定し始めていた。
 副作用はまだあるものの、吐き気や倦怠感が少し和らぎ、笑顔もわずかに戻ってきた。

 「ねえお兄ちゃん……」
 ベッドの上で、咲は目を輝かせながら呟いた。
 「わたしが退院できたら、何したい?」

 その質問に、兄は一瞬答えを迷った。
 退院後も体調は完全ではない。無理はできない。
 でも、彼女の希望を潰すわけにはいかない。

 「……そうだな、外でアイス食べようか」
 「え、外で?」
 「そう。歩いて行ける場所にある、あの公園のアイス屋さん」
 咲の顔がぱっと明るくなる。
 「行きたい! 本当に行ける?」
 「少しずつ行ってみよう。」
 俺はそっと手を握り、微笑んだ。
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