光の向こうへ

外の空気

退院の日。
 病院の自動ドアを抜けると、夏の光が眩しく差し込んだ。
 咲は帽子を深くかぶり、サングラスをかけて少し恥ずかしそうに立っていた。

 「……はぁ、久しぶりだ。」
 小さな声で呟く。兄は微笑んで手を差し伸べる。
 「さあ、まずはアイス屋さんだ」

 ゆっくり歩く。まだ体力は完全ではない。けれど、咲の瞳は好奇心で輝いていた。
 道行く人の笑い声、風に揺れる木々、遠くで聞こえる子どもたちの声。
 それらすべてが、病院の窓から見ていた光景とは違う、新鮮な世界だった。
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