光の向こうへ

揺れる心と制限

退院して数日後。
 咲は少し元気になった気分で、休みの兄と近所の公園まで出かけた。
 「今日は少し遠回りしてもいい?」
 「うーん……無理は駄目。」
 「大丈夫! 今日はすごい歩ける気がする!」

 兄の心配をよそに、ルンルンで興奮している咲は早足で歩き始めた。
 しかし、ほんの十メートルほどで、彼女の足はふらつき始めた。
 「……あ、あれ?」
 顔色が急に青ざめ、息が荒くなる。

 兄はすぐに駆け寄り、腕を支えた。
 「おい!ちょっと待て、無理はすんなって言っただろ」
 「でも、歩きたいの……」
 「歩きたい気持ちはわかる。これ以上無理すると悪化するぞ」
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