勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~
第17話 読書作戦
ティアが挙動不審な動きをしながらリビングから出てきた。
最近、なんだか様子がおかしいことが多くなった。
どれも可愛らしいものだし、あまり言及はしないようにしている。
だけど、クラウドと仲良くしているところだけは感情が抑えられずについ向かってしまう。
ここのところ、やけに距離が近いのは気のせいだろうか。
リビングに入ると、ソファーの上に見たことのない本が置かれていた。
「囚われの王子と魔法使い……」
ティアが僕に隠れるようにして本を読んでいることがあるのは知っている。
これが、その本だろうか。でも、どうしてリビングのソファーに?
あれだけ必死に隠していたのに、ここに忘れていくとは考えにくい。
僕はソファーに座り本を開いてみた。
これは……見るからに男性同士の恋愛物語だな。
ティアはこういう話が好きなんだ。知らなかった。
そこでふと、舞踏会でのクラウドの言葉を思い出す。
『ティア嬢は喜ぶんじゃねえの。なんかこういうの好きそうだったし』
クラウドはこのことを言っていたのか。
ティアは実際に男同士の馴れ合いを見たくて、僕とクラウドを踊らせたということ?
そしてクラウドはそれを了承した。
クラウドもなんやかんやティアのお願いを聞いてあげている。
他の令嬢なら、そんなお願い絶対に断るはずなのに。
なんか、モヤモヤするな。
てことは、お腹が痛いと言っていたのは嘘だったのかな?
それとも本当にお腹が痛くて、ちょうどいいと思って僕たちを踊らせた?
わからない。わからないけれど、今さらそんなことを考えても仕方ないか。
ティアが少しでも喜んでくれたのならよしとしておこう。
でも、ティアがわざわざこの本をここに置いていったということは、隠すのをやめたということかな。
クラウドと何か秘密を共有していることが腹立たしかったけど、僕にも教えてくれる気になったんだ。それは嬉しい。
こうやってさりげなく本を置いていくところが可愛いな。
僕はそのまま本を読み進めることにした。
正直あまり興味はないけど、ティアの好きなものなら理解したい。
それに、クラウドは知っていて僕が知らないなんて気に食わないしね。
なんて邪な考えで読み始めたけれど、読み進めるにつれ、気づいたことがある。
これは、意外と奥が深いかもしれない……。
◇ ◇ ◇
読んでいる。
シオン様が『囚われの王子と魔法使い』を真剣に読んでいる。
置いてある本には気づいても、シオン様のことだから勝手には読まない可能性が高かった。
でも、作戦は上手くいったみたい。
開きっぱなしのドアの隙間からこっそり覗いているけれど、私には全く気付かず本に集中している。
時折、顎に手を置いて考え込んでいたり、眉をひそめて、まるで涙を堪えているかのようだ。
うんうん。感動するよね。尊い二人の関係に思わず涙が溢れちゃうのもわかるよ。
本を読んでいる姿も美しくてずっと見ていられる。
飽きることなく観察していると、シオン様がパッと顔を上げた。
目が合ってしまう。咄嗟にドアの後ろに隠れてしまったけど、逃げるのもおかしいよね。
そう思い中へ入ろうとしたら、目の前にシオン様がいた。
手には本を持っている。
「気になって、勝手に読んでごめんね」
「いえ、大丈夫です。この本、どうでしたか?」
「国内の情勢問題から国家間の問題に発展したり、身分差の障壁や友情にいたるまで様々な内容が描かれていて、物語としてとても面白かった。二人のやり取りがユニークで思わず笑ってしまいそうになったよ」
「それは……良かったです」
情勢問題……。難しいことを考えながら読んでいたんだな。私はそこまで考えて読んでいなかった。
でも、面白いと思ってくれたんだ。
「まあ、最後に結ばれる二人は現実的には難しい話だよね」
「シオン様は、もしこの物語の二人が現実にいたら、祝福することはありませんか?」
「それは……本人たちの意思を尊重すればいいと思うけどね」
「そうですよね! 私もそう思います!」
ああやっぱり! 意思を尊重してほしいと思っているんだ。
これはもうシオン様とクラウド様の関係を応援するしかないよね!
なんだか嬉しくなって、思わず笑顔になる。
「ティアは、どうしてこの物語が好きなの?」
「障壁を乗り越え、想いが通じ合い結ばれる二人が尊いからです!」
「そんなに好きなんだね」
「はい! とっても!」
「ティアの好きなものが知れてよかったよ。またお勧めの本があれば教えてね」
「わかりました!」
シオン様は私に『囚われの王子と魔法使い』を手渡すとリビングを出ていった。
なんだか、すごくいい感じじゃない? この本を気に入ってくれたってことだよね。やっぱり、共感する部分が多かったのだろう。
この物語みたいに男性同士で結ばれることは何も悪いことではないと思えれば、クラウド様との仲も、もっともっと深まっていくはず。
お二人の幸せそうな顔を想像するだけで私も幸せな気分になる。
ここのところ離縁作戦を決行できていなかったけど、また頑張らなくちゃ。
クラウド様がお見合いを受けてしまう前に。
最近、なんだか様子がおかしいことが多くなった。
どれも可愛らしいものだし、あまり言及はしないようにしている。
だけど、クラウドと仲良くしているところだけは感情が抑えられずについ向かってしまう。
ここのところ、やけに距離が近いのは気のせいだろうか。
リビングに入ると、ソファーの上に見たことのない本が置かれていた。
「囚われの王子と魔法使い……」
ティアが僕に隠れるようにして本を読んでいることがあるのは知っている。
これが、その本だろうか。でも、どうしてリビングのソファーに?
あれだけ必死に隠していたのに、ここに忘れていくとは考えにくい。
僕はソファーに座り本を開いてみた。
これは……見るからに男性同士の恋愛物語だな。
ティアはこういう話が好きなんだ。知らなかった。
そこでふと、舞踏会でのクラウドの言葉を思い出す。
『ティア嬢は喜ぶんじゃねえの。なんかこういうの好きそうだったし』
クラウドはこのことを言っていたのか。
ティアは実際に男同士の馴れ合いを見たくて、僕とクラウドを踊らせたということ?
そしてクラウドはそれを了承した。
クラウドもなんやかんやティアのお願いを聞いてあげている。
他の令嬢なら、そんなお願い絶対に断るはずなのに。
なんか、モヤモヤするな。
てことは、お腹が痛いと言っていたのは嘘だったのかな?
それとも本当にお腹が痛くて、ちょうどいいと思って僕たちを踊らせた?
わからない。わからないけれど、今さらそんなことを考えても仕方ないか。
ティアが少しでも喜んでくれたのならよしとしておこう。
でも、ティアがわざわざこの本をここに置いていったということは、隠すのをやめたということかな。
クラウドと何か秘密を共有していることが腹立たしかったけど、僕にも教えてくれる気になったんだ。それは嬉しい。
こうやってさりげなく本を置いていくところが可愛いな。
僕はそのまま本を読み進めることにした。
正直あまり興味はないけど、ティアの好きなものなら理解したい。
それに、クラウドは知っていて僕が知らないなんて気に食わないしね。
なんて邪な考えで読み始めたけれど、読み進めるにつれ、気づいたことがある。
これは、意外と奥が深いかもしれない……。
◇ ◇ ◇
読んでいる。
シオン様が『囚われの王子と魔法使い』を真剣に読んでいる。
置いてある本には気づいても、シオン様のことだから勝手には読まない可能性が高かった。
でも、作戦は上手くいったみたい。
開きっぱなしのドアの隙間からこっそり覗いているけれど、私には全く気付かず本に集中している。
時折、顎に手を置いて考え込んでいたり、眉をひそめて、まるで涙を堪えているかのようだ。
うんうん。感動するよね。尊い二人の関係に思わず涙が溢れちゃうのもわかるよ。
本を読んでいる姿も美しくてずっと見ていられる。
飽きることなく観察していると、シオン様がパッと顔を上げた。
目が合ってしまう。咄嗟にドアの後ろに隠れてしまったけど、逃げるのもおかしいよね。
そう思い中へ入ろうとしたら、目の前にシオン様がいた。
手には本を持っている。
「気になって、勝手に読んでごめんね」
「いえ、大丈夫です。この本、どうでしたか?」
「国内の情勢問題から国家間の問題に発展したり、身分差の障壁や友情にいたるまで様々な内容が描かれていて、物語としてとても面白かった。二人のやり取りがユニークで思わず笑ってしまいそうになったよ」
「それは……良かったです」
情勢問題……。難しいことを考えながら読んでいたんだな。私はそこまで考えて読んでいなかった。
でも、面白いと思ってくれたんだ。
「まあ、最後に結ばれる二人は現実的には難しい話だよね」
「シオン様は、もしこの物語の二人が現実にいたら、祝福することはありませんか?」
「それは……本人たちの意思を尊重すればいいと思うけどね」
「そうですよね! 私もそう思います!」
ああやっぱり! 意思を尊重してほしいと思っているんだ。
これはもうシオン様とクラウド様の関係を応援するしかないよね!
なんだか嬉しくなって、思わず笑顔になる。
「ティアは、どうしてこの物語が好きなの?」
「障壁を乗り越え、想いが通じ合い結ばれる二人が尊いからです!」
「そんなに好きなんだね」
「はい! とっても!」
「ティアの好きなものが知れてよかったよ。またお勧めの本があれば教えてね」
「わかりました!」
シオン様は私に『囚われの王子と魔法使い』を手渡すとリビングを出ていった。
なんだか、すごくいい感じじゃない? この本を気に入ってくれたってことだよね。やっぱり、共感する部分が多かったのだろう。
この物語みたいに男性同士で結ばれることは何も悪いことではないと思えれば、クラウド様との仲も、もっともっと深まっていくはず。
お二人の幸せそうな顔を想像するだけで私も幸せな気分になる。
ここのところ離縁作戦を決行できていなかったけど、また頑張らなくちゃ。
クラウド様がお見合いを受けてしまう前に。