鬼課長は、ひみつの婚約者
第3話 致命的なミスと、彼の真意
真由の凍えるようなまなざしに、私はただその場に立ち尽くしていた。
まさか、真由がいるなんて……。これじゃあ、家に帰れないよ。
あと数歩でたどり着くはずの安息の場所が、真由という壁のせいで今はすごく遠い。
でも、このままここに突っ立っているわけにはいかない。
「真由」
私は意を決して、真由に声をかけた。
「あの、真由……どうしてあなたがここに?」
勇気を出して真由に聞いてみたが、彼女は何も答えず、ただ不敵な笑みを浮かべている。
「もしかして、何か私に用?」
私がもう一度尋ねると、真由はスマートフォンを手に持ち、それを私に見せつけるようにして言った。
「この場所、覚えたから。これからは、いつでも来られるわ」
──ドクン!
真由の言葉に、私の心臓は嫌な音を立てた。
この場所を覚えたからって、一体何のために?
真由は満足そうに微笑むと、私に背を向け、闇の中に消えていった。