鬼課長は、ひみつの婚約者
第5話 公になった秘密
「おはようございます!」
いつもと変わらない月曜の朝。オフィスのドアを開けた途端、私の心臓は嫌な音を立てて早鐘を打った。
フロアに足を踏み入れた瞬間、まるでスポットライトを浴びたかのように、全員の視線が私に集中した。
それは、これまでの同僚たちの好奇の目とは全く違うものだった。
好奇心と、探るような眼差し。私は、顔を伏せて自分のデスクまで早足で向かう。
すると、近くのデスクからひそひそと囁く声が聞こえてきた。
「まじかよ。あの望月課長と、付き合っていたのか……」
「え、でもなんか意外じゃない?」
そんな言葉が、耳の奥でこだまする。
私が会社で瑛斗と話すことは、ほとんどない。だからこそ、周りの同僚たちは、私たちの関係が信じられないのだろう。
私は、顔を伏せたまま自分のデスクに向かった。
隣の席には、すでに同期の真由の姿があり、ドキリとする。