鬼課長は、ひみつの婚約者
第6話 二人で歩む未来
七月中旬。長かった梅雨が明け、夏の強い日差しがオフィスに差し込んでいる。
瑛斗と私の関係は、社内で公然となった。
当初の好奇心に満ちたまなざしは、いつの間にか祝福へと変わっていた。
瑛斗がこれまでと変わらない真摯な態度で仕事に取り組む一方、私も小さな成果を積み重ねていったからだろう。
給湯室で会う同僚たちは笑顔で挨拶を交わし、真由でさえも、少し気まずそうにしながらも、私と目を合わせて話すようになった。
瑛斗の『公私混同をしない』という信念は、社内の誰もが知るところとなった。
彼は、私を特別扱いするどころか、以前にも増して厳しく指導することさえあった。
「千堂。この企画書、もっと具体的なデータが必要だ」
厳しい言葉を投げかけられても、私はもう落ち込むことはない。瑛斗が私を信じ、期待してくれていることが分かるから。
そんなある日のこと。
「千堂くん。次期プロジェクトのリーダーを、君に任せたいと思う」
部長からの突然の言葉に、私は驚きを隠せない。
「私が……ですか?」