すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

12、奇跡を描く夜

 ハルトマン侯爵家に来てから、数日が経った。
 みんな私にとてもよくしてくれるし、食事も美味しく、毎日が穏やかで満たされていた。

 カイラの息子はふたり。兄のデイルは14歳、弟のリックは11歳で、幼い頃にスヴェンとよく遊んでもらったと話してくれた。
 その日は午後からエレノア様とのお茶の時間が控えていた。
 私がその場所へ向かっていると、リックが駆け寄ってきて私に飛びついた。


「レイラお姉様、今日は遊んでくれないの?」

 困惑する私に、兄のデイルがすかさず声をかけた。

「だめだよ、リック。大人同士のお話があるんだから、ちょっと我慢して」

 リックは少し不満そうに頬を膨らませたけれど、デイルの手を握って小さく頷いた。

「明日は時間があるわ」

 私がそう言うと、リックは「絶対だよ」と笑顔で返した。
 その様子を見て、私は自然と笑みがこぼれた。
 まるで本当に弟たちができたような気持ちになれたから。

 私はふたりを見送ったあと、庭園のテラスへ向かった。

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