すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

13、これからは私が主役よ(セリス)

「違うわ! ワインレッドのドレスだって言ったでしょう?」

 私は声を荒げ、侍女が持ってきたローズピンクのドレスを床に叩きつけてやった。
 布地が音を立てて広がるのを見ていると、胸の奥の苛立ちがますます膨らんでくる。
 最近は些細なことにも腹が立って仕方がないわ。


「申し訳ございません……すぐに手配を……」

 侍女は顔を青ざめさせ、慌てて頭を下げた。
 けれど、私の怒りは収まらないわよ。

「なんて愚かなの。今夜は王室主催のパーティよ。誰よりも美しく着飾らなければならない大事な夜なのに、あなたはドレス一つまともに準備できないの?」
「申し訳ございません」
「もういいわ。解雇よ」
「そ、そんな……」

 侍女は今にも泣きそうな顔をした。
 その頼りなさそうな表情が、私の苛立ちをさらに煽る。
 だって、泣きたいのはこっちなのよ。


「もう顔も見たくない。出ていきなさい。そこのあなた、新しいドレスを選んできて」

 背後に控えていた別の侍女に命じると、叱責された侍女は頭を下げて退室した。

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