すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

14、腑に落ちない(アベリオ)

 セリスが聖絵師(オーラリスト)として成功するのは、僕にとっても喜ばしいことだ。
 しかし正直に言えば、心のどこかでもやもやしている。

 結婚すれば、彼女は仕事を控えると思っていた。
 実際に今だって彼女はパーティに出ているか、あるいは僕と過ごしているかで、絵を描く時間などほとんどないはずだ。
 それでも、たまに仕上げた作品は圧倒的で誰もが称賛する。
 その才能を誇らしく思う一方で、僕の胸の奥には釈然としない思いが残る。


 彼女はこれ以上活動範囲を広げる必要はないのだ。
 侯爵夫人になれば、絵を描く暇などなくなる。
 妻として、まずは僕を支えてくれることが何より大切なのだから。

 絵の仕事なら、空いた時間に少しずつやればいい。

 王室の依頼を受けるのは当然だ。
 そうすればセリスの名声とともに、僕の名も世に広まり、侯爵家の安泰にも繋がる。


 しかし、カルベラ国にまで手を広げるのは納得できない。
 ただでさえ、貴族の令息たちがセリスを狙っているのに、異国の令息どもにまで彼女を知られるのは、到底耐えられない。

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