すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

15、新しい人生の始まり

 あの夜から、私は光の絵を描くコツを掴んだ。
 けれど、それは簡単に人前でさらすようなものではないと直感した。
 あの絵は誰かの痛みを映す。だから、むやみに商売にしていいものではない。
 スヴェンがひっそりと旅をしながら、人知れず誰かの痛みを描き続けてきた理由が、少しわかるような気がした。


「この絵を仕事にすることは考えられないわ。やるなら、ちゃんと絵具で描く作品であるべきだと思うの」

 そうエリオスに告げると、彼は静かに頷いた。

「スヴェンもそうしていた。うちの者は謝礼として衣食住を提供していたけど、彼にはそれで充分だったよ」
「私、右手の訓練をもっと頑張るわ。もう一度筆が持てるように。今回のことで、少し自信がついたの」
「ああ。君のやりたいようにするのが一番だ。それにしても、俺は幸運だな。君に奇跡の絵を見せてもらったんだから」

 エリオスがやわらかく微笑んだ。

 彼は本当に私の心を汲みとってくれる。
 決して意見を押しつけたりせず、代わりに感謝を向けてくれる。
 いったいどれほど、エリオスの言葉に救われてきただろう。

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