すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

18、君を取り戻したい(アベリオ)

 相変わらずパーティと外出に明け暮れるセリスに、僕は呆れるばかりだった。
 最近は何を言っても不機嫌になる。

 これなら大人しいレイラのほうがよかった。
 レイラは絵が描けなくなったが、侯爵夫人としてなら何ら問題はないから。


 セリスの家であのウィッグを見つけたときから、ずっと違和感が拭えなかった。
 もしかすると、僕が目撃したレイラの不貞現場はセリスだったのかもしれない。
 そんな可能性に気づけなかった自分を、僕は責めた。

 むしゃくしゃして、最近はよく酒屋へ入り浸っている。
 貴族がよく訪れるそこそこ格式のある店だ。
 ひとりで高級ワインを傾け、ほどよく酔いが回ってきたころだった。


「レイラという聖絵師(オーラリスト)が、奇跡の絵を描くらしいぞ」

 見知らぬ客のその言葉に、僕ははっとして耳を澄ませた。

< 155 / 219 >

この作品をシェア

pagetop