すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

20、静かな夜に伝わる熱

 あれから、父は幾度となく公爵家にやって来た。
 けれどエリオスは一貫して、会わないことを徹底した。

 父は声を荒らげ、門の前で訴えるようにして「裁判を起こす」と言い張ったが、何日経ってもその兆候は見られなかった。
 エリオスいわく、彼は実際に訴えを起こすことはできないのだろうと。だから、わざわざ脅し文句を言うためだけに頻繁に訪れるのだ。

 さすがに何度も追い返されるうちに、父もようやく諦めたらしく、公爵家を訪れることはなくなった。


 それとほぼ同じ頃、エリオスはハルトマン家へ手紙を出していた。
 私の事情を丁寧に説明したのだと彼は言う。
 まもなく、エレノア様から返事が届いた。

 彼女は私宛にも手紙をくださった。
 そこには「元気にしている?」とか「ちゃんと食事を取っているかしら」といった、温かく優しい言葉が並んでいた。

 そして、最後にこう書かれていた。

『パーティで会いましょう』

< 171 / 219 >

この作品をシェア

pagetop