すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

22、二度と近づくな!(エリオス)

 レイラが飲み物を取りにいって少し時間が経った。
 何かあったのだろうか。
 彼女の気配はそれほど遠くないので、おそらくこのゲストルーム内にいるはずだが、誰かと話でもしているのだろうか。

 俺の目の前を次々と人々が通り過ぎていく。
 そのたびに、いろんな感情が押し寄せてくる。
 嫉妬や欲望、憎悪や哀愁など。
 きっと彼らは表向きに笑顔を取り繕い、上辺だけの言葉で語り合っているのだろう。

 やはりこういう場は好きではない。
 知らなくていい他人の心まで伝わってくる。
 
 しかし、レイラとこれから生きていくためには、今までのように陰に隠れてばかりもいられないだろう。
 人前に立ち、彼女を守る立場にならなければならないのだ。


 ぞわり――
 突如、悪寒が走った。
 向けられたのは、言葉にできないほど生々しい欲の感情だ。

 これまでも令嬢たちから似たようなものを感じたことはある。
 だが、今感じるそれは、質が違う。重く、濁っている。

「どなたですか?」

 俺は、すぐそばに近づいてきた気配に声をかけた。

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