すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

24、恥をかかせてやるわ(セリス)

 レイラも、あの公爵も、絶対に許さない。

 そもそもレイラはあの日異国に売り飛ばされたはずなのよ。
 どうして戻ってきてるのよ。

 やっと私が輝けるときが来たというのに、あの子が戻ったらまた私の邪魔をするに決まっているわ。
 苛立ちが止まらない。あのふたりの顔が、何度も何度も頭に浮かんで離れない。

「私を見下したことを後悔させてやるわ」

 誰もいないゲストルームに駆け込み、ドアを荒々しく閉めた。

 鏡の中の私は涙で化粧が崩れ、目が赤く腫れている。
 これは悔し涙よ。
 だけど、これは利用できるわね。

 テーブルの上に置かれていた果物ナイフを掴み、ためらいもなくドレスの裾を裂いた。
 絹が裂ける甲高い音が響く。
 さらに、グラスに残っていたワインを手に取り、自分の胸元めがけてぶちまけた。

 真紅の染みが、まるで血のように広がっていく。

「ふふっ……これでいいわ」

 ぐしゃりと髪を乱し、片方のイヤリングを外して床に落とす。
 そして、息を整えると私は“被害者”の顔を作った。

< 195 / 219 >

この作品をシェア

pagetop