すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

2、私はただの金づるだった

 半年前。

 その頃の私は自宅の部屋でひとり、絵を描いていた。
 部屋にはベッドと簡易テーブルしか置かれていないけれど、決して貧しいわけではない。

 子供の頃に母を亡くし、父とふたり暮らし。
 私はスレイド伯爵家の令嬢という肩書きを持つが、父は綺麗なドレスを与えてくれない。
 食事も朝と夜の2回だけ。

 私はこの部屋から一歩も外へ出ることは許されない。
 けれど、外に出るような時間など、私にはそもそも存在しない。

 だって私は明日納期の作品を2つ、今日中に仕上げなければならないから。
 ここ数年、ずっとこんな生活だ。休む暇も、外に出る暇もない。

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