すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

26、さようなら、レイラ(セリス)

 レイラがバルコニーから落下した。
 正確には私が突き落としたの。

 私は悪くないわ。
 あんな絵を描いたレイラがいけないのよ。

 けれど、こうして冷たい石の牢獄の中でひとり過ごしていると、胸の奥から虚しさが込み上げてくる。

 あれから、私は衛兵たちに捕らえられ、治安隊に引き渡された。
 この鉄格子の向こうには誰もいない。


 レイラに本当に死んでほしいとは思わなかった。
 ただ、私の人生の邪魔だけはしないでほしかったのよ。


 レイラのことが憎くてたまらなくなったのはいつの頃からかしらね。

 幼い頃はレイラに憧れた。
 レイラは父親のいない私に優しくしてくれたから。
 本当の姉のように慕っていたの。


 けれど、レイラは私が決して手に入らないものを持っていた。
 それが母親の愛。

 レイラが絵を描くと、母親は嬉しそうに微笑み、彼女が勉強で良い成績を取ると、頭を撫でて褒めていた。
 私は、それが羨ましくてたまらなかった。

 どれだけ努力しても、どれだけ結果を出しても、私の母は私に優しい言葉をくれなかった。
 むしろ、レイラに及ばない私を叱り、叩くようになった。

 だから私は、レイラに勝たなければならないと思った。
 あの子より優秀でいなければ、母は振り向いてくれないと思ったから。

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