すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

27、あなたのために絵を描くわ

 あのとき――

 バルコニーから真っ逆さまに落ちていく瞬間、エリオスの手が伸びた。
 彼は私を抱きかかえ、まるで庇うように包み込んだまま、地面に落下した。

 そのおかげで、私の怪我は肩と足の打撲だけで済んだ。
 けれどエリオスは頭から血を流し、全身を強く打って骨折していた。

 真下に茂みがあったのが、唯一の救いだったと医師は言った。
 それがなければ、即死していたかもしれないと。

 それでも彼は、いまだに目を覚まさない。


 私は椅子に腰かけたまま、ベッドに横たわるエリオスをただ見つめていた。
 もう何日こうしているだろう。
 彼の頭は包帯で巻かれ、痛々しい姿が胸を締めつける。
 頬に傷もあり、肩も包帯で巻かれていた。

 時間が経つ感覚も忘れ、私は思考が固まったまま、ただ虚ろに彼を見つめている。
 何度か使用人たちが声をかけてくれるけれど、その言葉はあまり頭に入ってこなかった。

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