すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
8、彼女を救いたい(エリオス)
俺にはレイラの姿が見えない。
どんな顔をして、どんな髪色で、どんな佇まいなのか、わからない。
ただ、その気配だけは確かに感じとれる。
そして、内面までもが伝わってくるのだ。
これまで出会った誰よりも、彼女は澄んだ心を持っている。
それだけ知っていれば、俺には充分だった。
どれほど高貴な身分であろうと、どれほど雄弁に語る者であろうと、人の内側には必ず表には出さない影が潜んでいる。
だが、視力を失って以来、俺にはその影がかえってよく見えるようになった。
あれは10歳の誕生日を迎えて間もない頃のことだ。
最後に目にした光景は、窓の外に浮かぶ満月の夜空だった。
幼い頃から病弱だった俺は、療養のため環境のよい郊外の森にある別邸で過ごすことが多かった。
その日は、侍女が目を離したわずかな隙に、盗賊にさらわれた。
薬を嗅がされ、数日のあいだ意識は混濁していた。命にかかわるほどではなかったが、持病のせいで副作用が強く出た。
やがて公爵家の騎士たちに救い出され、盗賊たちは捕らえられた。
しかし、俺の視界はだんだん狭まり、人の姿がぼやけていった。
医師たちはありとあらゆる治療を尽くしてくれたが、俺の視力は日ごとに失われ、ついに何も見えなくなった。
どんな顔をして、どんな髪色で、どんな佇まいなのか、わからない。
ただ、その気配だけは確かに感じとれる。
そして、内面までもが伝わってくるのだ。
これまで出会った誰よりも、彼女は澄んだ心を持っている。
それだけ知っていれば、俺には充分だった。
どれほど高貴な身分であろうと、どれほど雄弁に語る者であろうと、人の内側には必ず表には出さない影が潜んでいる。
だが、視力を失って以来、俺にはその影がかえってよく見えるようになった。
あれは10歳の誕生日を迎えて間もない頃のことだ。
最後に目にした光景は、窓の外に浮かぶ満月の夜空だった。
幼い頃から病弱だった俺は、療養のため環境のよい郊外の森にある別邸で過ごすことが多かった。
その日は、侍女が目を離したわずかな隙に、盗賊にさらわれた。
薬を嗅がされ、数日のあいだ意識は混濁していた。命にかかわるほどではなかったが、持病のせいで副作用が強く出た。
やがて公爵家の騎士たちに救い出され、盗賊たちは捕らえられた。
しかし、俺の視界はだんだん狭まり、人の姿がぼやけていった。
医師たちはありとあらゆる治療を尽くしてくれたが、俺の視力は日ごとに失われ、ついに何も見えなくなった。