召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第20話 名誉挽回のチャンス

 翌朝。さすがのグリフィスも、昨夜のことが恥ずかしかったのか、私の世話はほんの少しだけ。代わりに豪華な朝食が出てきて驚かされた。
 これがグリフィスの照れ隠しなのか、と思いつつ、「た、食べきれないよ~」と訴える。すると、いつの間に用意していたのか、残りを箱に詰めてくれた。

「アゼリアが前に話していた、お弁当箱というものが気になって……」

 密かにそれっぽいものを購入していたらしい。図書館の食堂だと気が休まらないだろうから、と。

 確かに、最初は食堂が苦手だった。慣れない職場で、慣れない人たちに囲まれるのは、かなりのストレスを感じるからだ。相談所ができてからは、一般利用者から声をかけられたりして、なかなか休まらないことが多かった。

 だから、グリフィスのこの配慮は、とても嬉しかった。これが本当に私の旦那様だったら、と思えるほどに。

 しかし現実は違う。昨日の名誉挽回をしなければ、と図書館の中を散策する。ラモーナから、ずっと禁書区画前のスペースにいることはない、と事前に言われたからだ。

 どうやら、昨日の落ち込んでいる様子を、別の解釈と受け取られてしまったらしい。禁書を狙う者が毎日のようにやってくることはないからだ。「そんなに気を張ることはないですし、何もないことに落胆する必要もないですよ」とまで言われる始末。
 そのため今日は逆に、ラモーナに心配をかけまいと、そこから離れることにしたのだ。
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