召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第27話 駆けつけた先(ヘルガ視点)

「アゼリア!?」

 急いで相談所の扉を開けると、床に倒れているアゼリアを発見した。周りに散らばる複数のカード。その光景を見ただけで、悪い予感が脳裏を過った。
 一瞬の油断も、時間も惜しいという状況なのに、前に進めない。

 相談所を私が勧めたばっかりに、アゼリアが……!

「ヘルガ!」

 突然、同僚に肩を掴まれた。彼はこの相談所の案内役をしていて、私をここに呼び出した人物でもあった。

 マックス、とかいう男の動きが怪しかったため、相談所の再開前から、他の職員にも注視するように通達していた。グリフィスからアゼリアが狙われていることを、皆、知っていたからだ。

 この図書館の職員のほとんどが魔術師であるため、グリフィスの元にいるよりも、アゼリアを守り易い。さらにいうと、相手の狙いがタロットカードである以上、その両方が共にある方が、私たちにとっても都合が良かった。
 アゼリアはただ、そのタロットカードを呼び寄せるために、この世界に来てしまった被害者なのだから。

 同僚として、友人として、この世界を満喫してほしい。守りたい。相談所は周りへの説得のための手段だったけど、私はただ、アゼリアに居場所を与えたかっただけなのだ。
 烏滸がましいとは思うけれど、図書館に来た時のアゼリアは、しばらく周りに馴染めず、いつも不安そうにしていたから。

 だけど、その結果がこれだ。

 誰が一番悪いだなんてすぐに分かるのに、私は気がつくと、相手を睨んでいた。
< 154 / 215 >

この作品をシェア

pagetop