召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第32話 姉がくれたもの(グリフィス視点)

 翌日、相談所はすぐに閉鎖された。一連の出来事を多くの利用者が見ていたこともあり、大きな混乱には至らなかった。

 当のアゼリアは「再開してすぐに閉鎖だなんて……」と悔やんでいたが、こればかりは仕方がない。事件の詳細を公にすれば、図書館の利用者は減り、維持していくことが困難になる。
 それは周りも求めていない。アゼリアの安全が確保されれば再開する、という名目で閉鎖せざるを得なかったのだ。

 あとは……タロットカードのことである。アゼリアの手に戻ってきた後も、使用してほしくない、というのが私の我が儘でもあった。

 タロットカードは相変わらずウルリーケの魔力を感じるものの、以前のようにアゼリアへと移動している様子は見られなかった。それはただ単に、占いをしていないから、だと思っている。まだ、推測でしかないが。

 けれど一番危惧しているのは、第二、第三のマックスのような男が現れることである。捕えた黒いフードの男たちの背後を探ってみたが、さすがウルリーケを狙うだけあって、尻尾を掴ませてはくれなかった。

 そんな状況の中、私は魔塔と図書館を行き来しながら、それらの処置に追われていた、というわけである。こんな身動きが取れない状態で、またアゼリアに何かあったら、と思うと、仕事に集中することができなかったのだ。
 
 幸いにも館長が調整してくれたお陰で、お昼時間はアゼリアと共にできたり、退勤時間も一緒に帰れるように仕事を分散してくれたりと、頭が下がる思いだった。
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