召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第4話 一年で得たもの

 その後の私とグリフィスの関係は、出会ってから一年が経った今でも変わらない。偽装夫婦のままだった。けれど毎日、私を見送るグリフィスの姿に、誰も偽装だとは思っていない。
 美しい夫に愛された妻だと、皆に羨望の眼差しを向けられている……が私は居た堪れない気持ちでいっぱいになっていた。

 グリフィスは私のことを、あくまでも保護する対象でしか見ていない。私もまた、この世界に馴染むため、自分の居場所を得ることに、この一年間は精一杯だった。
 彼がなぜ、あの時、偽装結婚を申し出たのか。あの男たちに召喚され、狙われているのか。そんなことを考えている余裕などないほど、本当に大変だった。

 見知らぬ街並みに、見知らぬ人たち。最初に私がしなければならなかったのは、これを受け入れることだった。それが思った以上に、私の心を疲弊させたのだ。

 耳が尖っていたり、尻尾があったり。初めてグリフィスに街の中を案内された時は、思わず袖を掴んでしまったほどだった。漫画やイラストで見たことはあっても、さすがに実物を見ると、すぐに受け入れることはできなかったのだ。
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