召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
エピローグ
第38話 新しい日常
慌ただしい日々を送っていると、一カ月というのは早く過ぎ去ってしまう。この間、早春だと思っていたら、沿道に置かれたプランターに、色とりどりのチューリップがもう咲いている。
私がいた世界のような春を知らせてくれる桜の木はないけれど、こうして家の外に出ると、街中を飾る花々が、代わりに教えてくれるような気がした。
「アゼリア、行きますよ」
玄関の前で柔らかい風を受け止めていると、夫であるグリフィスが私に向かって手を差し出している。階段のような段差があるわけではないのに、月日が変わろうと、相変わらず私の世話を焼きたがる人だった。
それなのに、ウサギになると甘えん坊になるのよね。
手を取らずにふふふっ、と笑っていると不機嫌な顔をされた。そろそろ応えないと、お小言が飛んでくるかもしれない。
私がいた世界のような春を知らせてくれる桜の木はないけれど、こうして家の外に出ると、街中を飾る花々が、代わりに教えてくれるような気がした。
「アゼリア、行きますよ」
玄関の前で柔らかい風を受け止めていると、夫であるグリフィスが私に向かって手を差し出している。階段のような段差があるわけではないのに、月日が変わろうと、相変わらず私の世話を焼きたがる人だった。
それなのに、ウサギになると甘えん坊になるのよね。
手を取らずにふふふっ、と笑っていると不機嫌な顔をされた。そろそろ応えないと、お小言が飛んでくるかもしれない。