召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第6話 開かない玄関

 まだ日が高い中、私とヘルガは「お疲れ様です」と周りに言いながら、図書館を後にした。館内は(まば)らだったけれど、一歩外に出た途端、多くの人たちの行き交う姿が目に入った。
 するとヘルガが私の肩に手を置き、気にするな、とばかりに言ってきた。

「図書館は貴重な本を保存する倉庫。そう思いましょう」
「だけど困った時には手を差し伸べなければね。図書館は広いから」
「私たちが書架の位置を覚えるのも、館内を整えるのも、その時のためってね」
「利用者あっての私たちなのだから、けして蔑ろにしてはいけないわ」
「彼らのために我々がいるのだから。ふふふっ、思わず館長の言葉を復唱してしまったわ」

 閑古鳥が鳴いている図書館に勤務する私たちを励ますように、館長は常々そう言っている。怠けてはいけない。その姿も見せてはいけない、と戒めも含めて言ってくれているのだ。
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