召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第9話 異世界での占い

「実はね、私、失恋したばかりなの」

 気恥ずかしそうに、ゆっくりと話すヘルガの姿を見て、「ほら、やっぱり言い辛い悩みじゃない」と内心グリフィスに文句を言った。

「ばかりってことは最近?」
「うん。しかも告白する前に失恋したから、ダメージは軽いんだけど……長いこと片思いをしていたから」
「そうだったんだ」

 この世界の図書館に勤め初めてから一カ月。前職が司書だったからといっても、なかなか馴染むことができなかった。それぞれ図書館によってやり方や方針が違う、というのもあるけれど、一番の悩みは取り扱う分野の違いだった。

 特に魔術に関する分野は、取り扱いには注意が必要だから、という理由で最初に説明を受けたのだ。それだけでもう、本当に別の世界なんだと思い知らされて、密かに落ち込んだものである。

 好きな本に囲まれているのに、毎日沈んだ気持ちで出勤していた私に対して、真っ先に話しかけてくれたのがヘルガだった。私がグリフィスの妻だから、気にかけてくれたんだろうとは思うけど、それがどれだけ有り難かったか計り知れない。

 でも、あれ? ヘルガの失恋は最近で、しかも告白する前だって言っていなかった? それってもしかして……。

 私は思わず顔を横に向けた。
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