召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第2話 それは出会った時から

 時を遡ること、一年前。あの日は珍しく、いつもは通販で購入していたタロットを(じか)で買いたくて、書店へと足を向けたのだ。SNSでタロットフェアをしているという宣伝を見たのがキッカケだった。
 それを目当てに買う通販もいいけれど、まだ見ぬカードとの出会いもしてみたい。そんな期待もあり、仕事帰りに立ち寄ったのだ。

 自動ドアが開き、店内を見渡す。フェアだと宣伝していても、さすがにタロットなどの占いコーナーを入り口付近に作ることはしない。

 どうしても占いというと宗教や霊感商法のように、詐欺に使われてしまうケースがあるため、書店側も慎重なのだろう。私も趣味で占いをしている、というと変な目で見られるから公言はしていない。だからタロットなどのカードは主に、通販にしていた。

 初めて入る書店、ということもあって、緊張感が半端ない。雑誌コーナーの人混みを通り抜けて奥へと進み、そこでようやくタロットフェアの書棚を見つけた。
 上には大きなポップが付いていて、企画した人の本気さが伝わってくる。次に肝心の書棚の中は……本来なら背表紙が並んでいるところに、手のひらサイズの箱が並んでいた。それも幅をきかせているものだから、見ているだけで面白い。

 なんていうのかな。違和感と新鮮さが混ざり合っているかのような面白さ。ワクワクしてくるのだ。
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