召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜

第14話 決意(グリフィス視点)

 スヤスヤと小さな吐息を立てながら、私の腕の中で眠っている。黒いまつ毛がよく見えるほど、近くでアゼリアの寝顔を見たのは、これが初めてだ。

 寝室を共にしているが、ベッドはそれぞれ別れている。偽装結婚ということもあるが、自身にかけた魔術がいつ切れてしまうのか、それを恐れてのことだった。
 気を抜いているつもりがなくとも、体が悲鳴を上げてしまうと、ウサギに戻ってしまうのだ。

 この街を最初に案内した時のアゼリアの驚きぶりが、今でも目に焼きついている。驚愕した表情の中に垣間見える、恐怖だと明らかに分かる小さな震え。私の腕にしがみつきたいのに、遠慮する態度も含めて。

「もっと頼ってください」

 だからすぐに寝たい、というアゼリアの願いを叶えた。街中で魔術を使いたくはなかったが……やむ得ない。

「アゼリアの体が第一、ですからね」

 この疲労がただの仕事疲れなら、私もここまではしない。図書館で、司書の仕事をしているのであれば。
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