召喚された司書の相談所〜偽装結婚ですが旦那様にひたすら尽くされています〜
第2章 穏やかな日常に潜む影

第15話 なかなか上達しない占い

 ようやく見慣れてきた相談所の扉が開き、冷たい風と共に今日、最初の相談者がやってきた。冬から春へと変わる時期だが、まだまだ空気は冷たい。

 この相談所の中に、ストーブのような暖房器具はないけれど、代わりに温石のようなものが四方に置かれている。それが部屋全体を温めているのだと、グリフィスが教えてくれた。どうやら、この世界では簡易的な暖房器具として、普通に使われているらしい。

 相談者は一礼をすると、上着を脱ぎ、私の向かい側にある椅子に腰かけた。

「おはようございます。今日はどのようなご相談でしょうか」

 ここに来る相談者は大抵、成人が多いのだが、相手はどう見ても少女のように幼い。といっても、私が前にいた世界の高校生くらいだが。

 この世界の就学率がどの程度なのかも分からないし、そもそもこの年齢の子どもが通う学校があるのかも分からない。けれどそんな少女が、あの行列の一番に並ぶほど、早くからこの図書館に来ていたのだ。よほどの理由があるのだろう。

「大丈夫です。ここでの話は、外部に漏れることは一切ありません。安心してお話しください」

 子どもだからといって、小さい子向けの口調を使ってはいけない。この多感な年齢の時は、大人と同じ対応を取り、さらに口調も柔らかくするのが一番いいのだ。
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