幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
プロローグ
この恋は、もう二度と望んではいけないと、叶うわけがないと思っていた。
でも、神様。なんのいたずらでしょう……
恋人に盛大に裏切られたこの日、こんなことが待っているなんて――
「楓……こっち見ろ。誰がこんな顔させているのか、ちゃんと見ておけよ」
薄暗いベッドルーム。生まれたままの姿で絡み合うふたり。
いつも余裕たっぷりの、七年ぶりに再会した初恋の幼馴染が、私を組み敷いて、ひたすら翻弄している。
「ぁっ……待って」
たまらなく煽情的で、見ていられないくらい淫らなのに、初めて見る奏君の男の顔から目が離せない。
「あんなこと言って煽ったのは君だぞ? ちゃんと〝約束〟は守ってくれよな? もう絶対に、俺から逃がさない――」
律動が早まり、瞼の裏がチカチカと火花が散りだす。
奏君はずっとお兄ちゃんの親友で、彼は私のことは、それはそれは大切に扱ってくれたが、妹としか見ていないはずだった。
いや、違う。あの日、『妹』でもないと……私の存在が彼の足枷になっていたことを知ってしまったのだ。
思わぬ形で彼の本心を知ってしまった私は、もう手を伸ばすことを諦めた。
——なのに、こんなの……抗えないよ――
私を抱きしめる奏君の背中をぎゅうっと抱きしめながら、二人で昇りつめた。
「楓、俺だけを見ていろ――」
甘美な魔法の言葉が、私を心の扉をこじ開けようとする。
――もう、望んではいけないと思っていたのに、まさかこんなことになってしまうなんて……
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