幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
六章 大使公邸で再々会
車窓の外に広がるパリの街は、柔らかな夕陽を浴びて宝石を散りばめたみたいにきらきらと輝いている。とても心穏やかな気持ちにさせられて、昨夜の不安が緩やかに落ち着いていくのが分かる。
私は今、大使公邸で開かれるパーティーに向かう車に乗っている。
――しっかりと務めなきゃ。
整えてもらった自分の衣装を見つめながら、そっと今朝のことを思い出す。
遅めの朝食を終えると、すぐに奏君が手配してくれたスタイリストさんたちがやってきて、パーティ―に向けた準備が始まった。エステで念入りに体を磨かれ、ヘアメイクが施され、用意されていた色留袖に着せ替えられた。
衣装は五つの紋が染め抜かれた、薄藤色の色留袖だった。裾模様の菊と鶴が柔らかに広がり、比翼仕立ての白が僅かに覗くたびに、清楚さが際だつ。
真っ直ぐなダークブラウンの髪は、襟足をきゅっとまとめ、上品なシニヨンスタイルにしてもらった。小さな白樺のかんざしが和の気品とともに私を導いてくれるようで、心がすっと静まっていく。