幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
八章 彼女の本当の顔
八月二週目の土曜日。
世間は八月の連休の空気に包まれているが、やはり私と奏君は相変わらず仕事の日々である。
同じ部署の同僚たちと会社近くのレストランで夕飯を食べた私は、時間を見てとあるホテルへ向かっていた。
タクシーの車窓を見ながら、気持ちの通じ合った翌日ことを思い出す。
『え? 食事?』
朝一番に、ちょっとだけ様子のおかしな柊兄を自宅に送り出し、続いて要人対応のため仕事に向かう奏君を見送るときだった。奏君が提案してくれた。
『ああ、その同窓会の会場の老舗ホテルなんだけど、そこのバーのワインコーヒーが美味しいって同僚から聞いたんだ。二次会には出るつもりはないから、帰りもそんなに遅くならないし、もし楓さえ良ければロビーで待ち合わせして、一緒に飲んでいかないか?』
同窓会は、お台場で行われるらしい。
参加のために、奏君は可能な限りスケジュールを前倒しし時間を作ると言っていた。そんな忙しいときにいいのかな? と思わないでもないけれど、デートの誘いは素直に嬉しかった。
『行きたい、奏君とデートしたい』
『これがデートって……』