幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
九章 すべての答え
奏君から電話がかかって来たのと、目の前の彼に話しかけられたのは、同じタイミングだった。
伸びてきて手を咄嗟に振り払ったら、その反動で奏君と電話していたスマートフォンが地面に落ちてしまった。
私は戸惑いつつも、目の前の彼――浩太を見つめていた。
「わ、悪い、そんなつもりじゃなかったんだ」
浩太が、私は通話の切れてしまったスマートフォンを拾いながら、謝罪した。
スマートフォンは通話は切れてしまったが、壊れてはいない。だから大丈夫だけれど……
「なんで浩太がこんなところに……」
警戒心丸出しで、少し前に地方支社に異動した彼を、スマートフォンを受け取りながら呆然と見つめた。
もう、会うことはないと思っていた。というより、あんなことがあって、もう会いたいとすら思っていなかった。
スーツ姿で会社帰りとも見える彼は、最後に会ったときよりも、随分落ち着いているように見える。薄茶色の髪は黒に代わっていて、スーツの着こなし方もどことなくキチッとしている。
――なんだか……出会ったころの彼に戻ったみたい。