幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
十章 変わらない気持ち
連休の賑やかさが緩やかに引いていった五日後の夕刻。
私は、チャリティー音楽祭の行われる国際ホールへ向かう車内にいた。
スタイリストさんにセットしてもらった車窓に写る自分と見つめ合い、息を吐いて心を落ち着ける。
衣装はもちろん奏君のプレゼントしてくれた、小花柄のホルターネック型のドレス。裾がひらひらと軽やかに揺れる様が何とも涼やかだが、私の落ち着かない心を示しているようだった。
隣をそっと隣に移すと、相変わらず眩いほどにカッコいい奏君の姿。
大使公邸のパーティーときと同じ型のブラックスーツに、落ち着いた濃紺色のネクタイをしている。いつも色気を漂わせる少し癖毛の黒髪は全て後ろへ流し、綺麗な顔立ちが露わになっていた。
……控えめに言って、国宝レベルに素敵だ。
自然と視線が重なり合い、膝の上の手に優しい温もりが重なった。
「そろそろ着くぞ。緊張は?」
「……なんとか、大丈夫。奏君が隣にいるから」
本当のことを言えば、緊張は最高潮だ。
まるで、戦いに赴くような気持ちだった。
それでも、色んな意味で、負けるわけには行かない。