幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
エピローグ
三ヵ月後、十一月末の某吉日。
私は思っていたよりもうんと早く、この日を迎えていた。
「楓……とうとう奏一のものに……っ! くううぅっ、俺は寂しいぞ……っ」
「ずっと籍は入って俺と住んでいただろう……今更なんだ?」
控室にやって来て、花嫁衣裳の私を見るなりズビズビ涙を流し出した情緒不安定の柊兄に、奏君が飽きれたようにツッコミを入れる。
私は見慣れた光景を声を上げて笑いながら、ふたりをなだめた。
――挙式を決意して三ヵ月、まさか、こんなにも早く迎えられるとは思わなかった。
セーヌ川沿いにひっそりと佇む、歴史を刻んだ小さな石造りの教会。雑誌で見て「素敵」と何気なく口にしたこの式場を、彼が自分の知人が経営だったのもあって、あっという間に予約してくれた。あまりにも俊敏で驚いたが、奏君から本当に早く挙式をしたいという気持ちが伝わってきて、素直に嬉しかった。