幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
二章 絶対に逃がさない side奏一
荒ぶる呼吸を整え、汗ばんだ柔らかな身体を隙間なく抱きしめる。
腕の中で意識を手放した彼女の頬に、何度も口付けた。
――……やっと、ここまで来られた。
素っ裸で彼女に縋る様に抱きしめる俺は、なんとも滑稽かもしれないが、それほど感慨深いのだと理解して欲しい。
……人間誰しも、過去に後悔というものを味わったことがあるだろう。
俺、九条奏一にとっては、目の前の木下楓こそが、そうだった。
七年前に砕け散った恋情をどうしても諦めきれない俺は、この好機をどうしても逃すわけにはいかなかった。
「……楓、もう絶対に逃がしてやらないからな」
腕の中で眠る彼女を見つめながら、出会った頃を思い出した。
◇◇◇
楓に出会ったのは、彼女が幼稚舎に入舎したてで俺が九歳の頃だった。
両親が大企業の取締役という家庭で育った俺は、とても裕福だったが割と寂しい思いをして育ったのをよく覚えている。
家は広く世話役の家政婦がいたが、仕事でほとんど両親のいない家は、温かみが無くもの寂しかった。