幼馴染の執着は甘く蕩ける〜私をフッた外交官が、結婚したら毎夜猛愛を貫いてきまして……?
五章 パリのデートと七年前のこと




 
 懇親会から、ひと月が過ぎた。
 季節は柔らかな春からじめじめした空気がまとわりつく、六月の初旬を迎えていた。

 奏君は、相変わらず忙しい。先日の外相会談のときに比べればそうではないが、今は例のチャリティーイベント……もといチャリティー音楽祭の準備に向けて奮闘中だと言っていた。とても力を入れているらしく、私も彼が少しでも安らげる空間を作ってあげたいと私も奮闘している。

 結婚生活も変わりはない。……というより、むしろ彼への気持ちを自覚してから、順調だと言ってもいいかもしれない。前よりも自然と彼からのハグやキスを受け入れられるようになったし、体を繋げれば素直に「もっともっと」と求められるようになった。結婚当初よりも、とても公私ともに充実していると思う。

『もう俺から離れるなよ』

 ふと蘇る、懇親会の夜の奏君の言葉。あれから何度も思い返している。
 正直……まだ、わからないこともあるけれど、今はしっかり奏君を支えて、そばにいたいと思う。
 事が動き出したのは、そんな穏やかな日が続いていた、ある夜このとだった。

 
「え? フランスの在日本大使公邸のパーティー?」


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