ちびっこ息子と俺様社長パパは最愛ママを手放さない

恋しい天国と美しい監獄


 透き通った波が穏やかに打ち寄せる白い砂浜の上に、小さなサンダルの足跡ができていく。私の先を行く彼は、立ち止まってなにかを拾い、くるりとこちらを向いた。

「ママ! ほうせきみつけた! ピンクのやつ」

 目をきらきらさせ、嬉しそうに私に駆け寄ってくるわが子がかわいくて仕方ない。

「ママだいすきだからあげるー」
「いいの? ありがとう」

 幸せを感じながら半透明な淡いピンク色のシーグラスを受け取ると、彼も満面の笑みを見せた。

 この子の名前は、大きなお腹を抱えて離島であるここの海を眺めていた時に浮かんだ。
 美しい海の、緑がかった深い青色の一字と、もうひとつの漢字は、信念を持ってまっすぐに進んでほしいという願いを込めて選んだ。
 今も想う最愛のあの人のように、強く生きてほしいと。

 彼にはきっともう二度と会えない。恋しさも寂しさも飲み込んで、彼との宝物であるこの子に、私のすべての愛情を注いでいる。

 皆が平和でいるためには、今の暮らしが最善なのだと信じて──。


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