その優しさに溺れる。〜一線を超えてから、会社の後輩の溺愛が止まらない〜

休日のぬくもりと、知らなかった横顔

「……詩乃さんって、休日何してるんですか?」

朝の光の中、ベッドで背後からそっと腕をまわされ、耳元に優しい声が落ちる。

「んー……ドラマ観たり、掃除したり、あとは買い物行くくらいかな。普通だよ」

「そうなんですね」

「つまんない女でしょ」

ありのままを言っただけ。自分を卑下したわけではないけれど。

「……べつに。つまんなくなんかないですよ」

湊はあっさり否定し、抱きしめる腕に少し力を込める。

「詩乃さんのこと、もっと知りたいだけです」

その言葉に、胸がざわつく。

「……湊くんは?」

「俺も家事をまとめて終わらせますね。掃除、洗濯、買い出しとか」

「わかる。意外とやること多いよね」

「はい。でも、今日は――」

言い淀む湊。少し間を置き、問いかける。

「……今日、予定ありますか?」

「ないよ?どうかした?」

「姪っ子の誕生日プレゼントを買いに行こうと思ってて。詩乃さんにも選んでもらえたら嬉しいです」

「えっ……わたしでいいの?」

「詩乃さんのセンスに頼りたいんです」

照れくさそうな笑顔に、胸がふわっと温かくなる。

「……うん。行く。いったん帰って支度して、駅前で待ち合わせしよう」

「やった」

その一言が、嬉しそうに響いた。
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