捨てられ仮面令嬢の純真
レオの帰還とセレスの誇り
ラヴォー家の父と長男が厳しいやり取りをしている頃、次男であるレオは王都にたどりついたところだった。
だがそこで異変に気づく。街の門に、普段はいない騎士団員の姿があった。
「あーっ! レオ! おっかえりー!」
ぶんぶんと手をふったのはウスターシュだ。レオが帰着するはずということで、フェルナン団長が派遣したのだった。
不意の出迎えにレオは困惑する。だがウスターシュは容赦なくレオの馬の轡を取った。ともに戻った数人の従者とともに門の中へ引っぱり込まれる。
「いやいや、なんだよ? 俺の手綱なんか取らなくていいぞ」
友人にそんなことをさせておけない。馬から下りるレオにウスターシュはエヘヘと笑った。
「ちょっと昨日から、市中で暴動が起きちゃっててさ」
「はあ!?」
レオは目をむく。暴動とは穏やかじゃない。そんな報告をウスターシュにさせないでほしかった。緊迫感がなさすぎて気持ちが迷子になる。
ウスターシュは苦笑いで説明した。貧民により外国商人の倉庫が襲われ、鎮圧したこと。だが似た案件がちまちまと発生していること。おかげで市場などを封鎖せざるを得ず、住民が困窮しそうなこと。
レオはため息をこらえた。王都の民が不憫な状況なのはわかっていたが、やはりそんなことになったのか。
「で、騎士団の対応は」
「俺らは道路の封鎖と巡回。警ら隊が現場の取り締まりと捕縛をやってる」
「……その程度で済んでるんだな」
レオが安堵したのは、王国軍が出て苛烈な弾圧を、という局面にはなっていないことだ。後ろに控えている従者たちは、これから軍に戻るのだから。
だがウスターシュは声をひそめた。
「陛下は不逞の輩など圧し潰せ、って言ったらしいけど」
「……そうか」
言いそうだと納得してしまい、レオの心はグラリとよろめいた。